もともと江戸時代に暴れる犯罪者の動きを封じ込めるための捕物用として使われた道具です。形状は、U字形の金具に2〜3メートルの柄がついており、使用方法は、金具の部分で相手の首や腕などを壁や地面に押しつけて捕らえます。
はじめに、「さすまた」を使用する相手は、凶器または使い方によって凶器になり得るバットや角材などの物を所持する犯罪者で、一般私人による現行犯逮捕を行う場合は、誰が考えても同じくらいの、逮捕のため必要かつ相当と認められる範囲内で実力行使が許されています。
また、正当防衛として自分自身又は他人の生命・身体に対する危害を防ぐために必要とする程度を越えない範囲内で実力行使を行えますし、どちらにしてもその実力行使によって相手が怪我をしても罰せられません。
このように「さすまた」を使用する相手は凶器等を所持した犯罪者ですから、まず「不審者」と「犯罪者」は違うことを理解するとともに、相手が不審者なのか犯罪者なのかをよく見極めることが重要です。
不審者と犯罪者の一例を挙げますと、
不審者 挙動(立ち振る舞い)に異状がみられる人、犯罪に発展するおそれがある行動を行う人
例 通行中の人々に声をかける人
路上で理由もなく大声を張り上げている人
あてもない様子で付近を歩き回る人
犯罪者 犯罪を犯した人
例 居宅や学校、会社などの人が看守する(管理・支配する)建物に無断で侵入した人
ナイフや包丁を手に持って押しかけてきた人
椅子などを振り回して物を壊した人
などです。
挙動がおかしい不審者の場合は、ふざけている方なのか、何らかの疾患がある方なのか、それとも今から何らかの罪を犯そうとしている者なのかなど外見上判別が付かず、このような不審者の段階で「さすまた」を一方的に用いることは違法行為となります。
そこで大切なことは、職場内で不審者を発見又は他の職員や顧客などから不審者通報を受理した段階で、まず
(1) 110番通報を実施する
ことが重要です。
もし間違っていたらなどの心遣いは無用です。例えば犯罪に至らない病人だったり、顧客同士の単なる口論程度であることが判明したのであれば、追加連絡として更に110番通報すれば足ります。要は早い段階で警察へ通報し、現場臨場を求めておくことが極めて重要なのです。
結果的に、「不審者」程度で終わればよいのですが、凶器を取り出したり他人に暴力をくわえるなどの犯罪行為に至った時点で110番通報を行ったのでは対応が遅れてしまいますので、できる限り早い段階に通報することが重要なのです。
参考までですが、110番通報を行って、直ぐ電話を切るのではなく、例えば「実況中継的に通報を継続する方法」もあります。
不審者の行動等を見ながら逐一警察へ通報することによって、警察の体制づくりに役立ちますし、早期現場臨場を促すことができるのです。
次に、110番通報と並行して実施すべき事は、凶器などを持っていることを想定し、
(2)「不審者」発見の段階で、速やかに明確な任務分担とそれに基づく行動を開始するとともに「さすまた」などの対応道具を事前準備する
(3)任務分担に基づく速やかな避難などの措置
を行うことが重要です。
不審者の行動にはいろいろありますが、凶器を出した時点で慌てて「さすまた」などを準備するのではなく、「万が一、凶器を持っていたら」という状況を想定して準備することが重要です。
「準備」とは、設置場所から直ぐに持ち出せる体制ではなく、相手に見せびらかす必要はありませんが、不審者がいる現場まで持参して直ぐに使用できる状態にすることであり、結果として不審点が解明されたり、無抵抗の犯人であった場合は「さすまた」を使用しなければよいのです。
なお、保育園や学校、老人ホームなどの保護すべき方々が多い施設の場合は、「不審者発見」と同時に素早い対応を開始することが重要ですから、常日頃から不審者や犯罪者が侵入した場合における犯人対応要領とともに、誘導担当者の指示に基づく避難準備と避難行動、施錠設備等があれば侵入を防ぐための措
置などもセットにして訓練を実施すべきです。
次に、突然、不審者が職場等に侵入してきた場合は
(4) 相手に声掛けして用件を尋ねる
ことが必要で、問いかけに対する言動から、おおよその判断ができます。
警察官の場合、「不審者」と判断した場合は、職務質問へ移行する訳ですが、私達一般人としては声掛けが一番大事です。
声掛けを行うことで犯行を思いとどまらせたという事例を耳にしますが、声掛けを行うことによって突然隠し持っていた凶器を取り出すなど、不審者から犯罪者に豹変する場合もありますので、相手から離れた位置から、相手や周囲の人達に知らせるくらいの大声で「声掛け」を行って様子を見守ることにより
不審者なのか犯罪者なのかの判断がつきます。
また、既に凶器等を所持している場合は、大声で周囲の方々に異状を知らせながら、すかさず
(5)「さすまた」や身近な椅子などで、けん制・威嚇
し、これと同時に110番通報や避難誘導などを行うこととなります。
「さすまた」の役目
次に「さすまた」の役目について申し上げます。
冒頭でお話をしたとおり「さすまた」を用いて相対する相手は、凶器を持ち、あるいは凶器になり得るような木刀やゴルフクラブ、ビンなど(用法上の凶器)を振り回しているような犯罪者であります。
このような犯罪者から自分や他人の生命・身体・財産を守るため犯罪者を取り押さえ、あるいは防衛する場合に「さすまた」を使用することになりますが、「さすまた」を用いて犯罪者を取り押さえるには相当の人員と訓練が必要で、一般人の場合は現実的に不可能に近いかもしれません。
このような現実を踏まえて申し上げれば「さすまた」は
「犯罪者を取り押さえる道具」
というよりは、
(1)「子供達や顧客、同僚やその場に居合わせた方々が逃げる時間を確保するための道具」
あるいは、
(2)「警察が駆けつけてくる時間を稼ぐための道具」
として使用するものと認識して頂きたいと思います。
通常の「さすまた」の特性
まず通常の「さすまた」をみればお分かりのとおり、犯人を取り押さえる場合は相手の首や胴あるいは足を壁や地面に押さえつけることが必要で、足を払う「返し」の機能がある場合は、犯人を倒した後に地面や床に相手を押さえつけることが必要です。
この場合、犯人も黙って抑えられていませんので当然「さすまた」に手を掛けて外そうと暴れますから、犯人に負けないくらいの力が必要ですので一人では大変難しく、場合によっては「さすまた」を奪われて反撃されてしまう事態となります。
また、校庭のように周囲に壁がない広い場所では、犯人を「さすまた」で押さえ込もうにも、犯人が前後左右に逃れますので、警察官が駆けつけてくるまで犯人と対峙し続けることが必要となります。
新型さすまた「トスガードあしどめくん」を開発した目的
今、申し上げたとおり、「さすまた」の使用目的は「時間稼ぎのため」ですが、通常型の「さすまた」を用いて目的を達成するためには、その機能の特性から、ご覧のとおり
警察官が到着するまでの間、職員が凶器などを持った犯人と対峙し続けることが必要
です。
警察庁で示した平成29年中の、110番通報から現場到着までの時間、いわゆるリスポンスタイムの全国平均は7分5秒(出典:平成30年版警察白書)とのことですが、現在の交通事情やパトカーの警ら位置によって到着時刻が変化し、到着が遅れれば遅れた分だけ、私達は身の危険を感じながら犯人と対峙を続けて行かなければならないのです。
たかだか7分位といっても、刃物などを持って暴れる犯人と直接対峙している人にとっては非常に長い時間となります。
そのような状況を踏まえ、当社と致しましては、
犯人より自らが優位な立場に立ち
そのうえで、
みんなが無事に避難ができる時間の確保
警察官が到着するまでの時間稼ぎ
と
犯人に更なる犯罪を重ねさせないこと
を目的として開発したのがこの「トスガードあしどめくん」です。
「あしどめくん」の特徴と使用方法
まず、この「あしどめくん」の特徴は、男性でも女性でも楽に使用できることを考慮し、重さも
一番長いLLサイズで約1.4キログラム
と非常に軽量に作られております。
そして最大の特徴は、先端にはさみ状のアームを取り付けていて、犯人の膝下の足を狙って挟めることです。
使用方法を実際にお見せしますと、例えば、凶器を持った犯人に対して、通常の「さすまた」でけん制しながら、「あしどめくん」で犯人の膝下をアームではさむとアームを自分で外すことは非常に困難で、しかもアームの解除方法は犯人に分かりませんし、万一、分かったとしても手が届かない位置にありますから、犯人はこの「あしどめくん」を足に付けたまま、現場にとどまるか逃げ出すほかない状態となります。
外に逃げても「あしどめくん」を引きずった状態では逃げ切れませんし、車に乗り込むことも極めて困難になります。
一方職員は、自由を著しく制限された犯人をその場に残して離れた位置から警察が来るまで犯人の様子を窺ってもいいし、「あしどめくん」の柄を持って犯人を制圧することも可能になります。
結局、犯人は「あしどめくん」が邪魔でこれ以上の犯罪を重ねることが難しくなりますし、職員側も犯人と危険な対峙を継続する必要が無く、しかも優位な立場で安全な避難と、警察官の現場到着を待つことが出来るのです。
何故、膝下を狙って挟むかと申しますと、殆どの人は上半身と違って足が無防備に近いことと、相手に大きな怪我を負わせないためです。
もう少し「あしどめくん」の使用法を説明しますと、凶器の種類によっての構えを変化させることもあります。
これはワイヤーがスイッチとなっていますから、木刀などの長さのある凶器を持った犯人と対峙する場合、誤動作を防ぐため、「あしどめくん」を単独で使用する場合、犯人が持つ凶器の種類によってアームを水平ではなく縦に立てて、けん制・威嚇しながら足を狙う方法を用います。
現実的には単独使用より、通常の「さすまた」や椅子などと一緒に犯人をけん制しながら「あしどめくん」を使用する方法が一番効果的と言えます。
最後に、「あしどめくん」のカバーですが、これも使い方によっては大変有効なものなのです。
例えば、カバーを付けたまま「さすまた」を持っていても相手は何の棒か分かりませんし、アームの向きも把握出来ないのです。
ですから、カバーを付けたまま使用しますと、犯人は「さすまた」と理解しないまま足に取り付けられてしまうのです。
チーム編成と任務分担
チーム編成 〜 臨機応変に編成
(一例)
110番通報担当 1名 遠慮せず小まめに通報(警察からの連絡受理を含む)
けん制・威嚇担当 2名 通常さすまた・椅子などの活用
「あしどめくん」担当 2名 (1名補助)
説得担当 1名 冷静に。(やめなさい、よしなさい 警察が来ますからやめなさい)
避難誘導係 人数は現状勘案(早い段階で行動)
訓練の実施
・日常業務中における短時間反復想定訓練の実施
・職場環境から想定される事案を設定して訓練
・被害想定を替えながら、回数を重ね練度向上を図る
・チーム編成を替えながら訓練し、どの担当になっても実施できる状態を作る
訓練結果の確認と共有
訓練が終了したら、良かった点・悪かった点を述べ合って共有し、次の訓練に生かすことが大切です。
皆さんが「さすまた」に興味を持ち、誰でも簡単に使用できる実感を経験することが重要です。
無料講習会
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